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子宮筋腫に対するUAEは、子宮筋腫があるということを除けば、健康な若年婦人が対象となる。したがって、検査時間の延長が放射線被曝の増加に結びつくので、いかにスピーデイに手技を行うかは重要である。欧米では、二人の術者が左右の大腿動脈を同時に穿刺して、よーいドンで対側の子宮動脈をねらうと早く済むという報告もあるようだが、あまり現実的でない。私は、通常の右大腿動脈穿刺にてUAEを行っており、1000例ほど経験したが、初期の例を含めても平均透視時間は8分程度、穿刺からカテーテル抜去まで15分程度で済ませる。もちろん挿入困難例、卵巣動脈塞栓付加例に遭遇することもあり、その場合は手技に時間を要することもあるが、通常であれば4〜7分程度の透視時間でUAEを終了する。患者さんにも手技に要した透視時間はお知らせしている。

基本的には

(1)骨盤動脈造影(PAG)にて左右の子宮動脈を確認

(2)選択的子宮動脈造影、造影後直ちに塞栓、確認造影。 対側も同様

(3)PAGで確認 (卵巣動脈の描出の確認)

であるが、(3)は省略してもよいと思うし、実際ほとんどの症例で省略している。MRI画像と血管造影像とのミスマッチがある場合には卵巣動脈の付加塞栓を考慮し(3)は必要になってくる。この場合、カテーテルの先端は腎動脈分岐部の高さに置かなくてはならないのは当然である。理由は5-12%の頻度で卵巣動脈は腎動脈から分岐するからである。 カテーテル手技私は毛利型を好んで使用している。まず毛利型カテーテルを総腸骨動脈分岐部まで挿入しPAGを得る。用手造影で十分な画像が得られる(私はUAEに造影剤の自動注入器を使用しない)。次に毛利型カテーテルの先端の曲がりを利用してガイドワイヤー先行で対側の総腸骨動脈に誘導する。対側の外腸骨動脈に挿入したら、時計回りに回しながら押し上げ、先端を同側の総腸骨動脈に挿入する。次に反時計回りに回しながらゆっくりと降ろす。内腸骨動脈はおおよそL4のレベルで分岐するので、そこを目標に先端を挿入する。(内腸骨動脈は後方に向かって分岐している!)先端が内腸骨動脈に挿入されたらそのままゆっくりと反時計回りに回しながら先端を前方に向けて子宮動脈をねらう(子宮動脈は前方に分岐する!)。この際、反時計回りに回す運動とカテーテルを引く運動がスムースであればほとんどの場合、他の動脈に先端を引っ掛けることなく子宮動脈に挿入できる。子宮動脈に挿入されたら、造影、塞栓、確認造影と行っていく。右子宮動脈の塞栓が終了したら、カテーテルを押し上げ、先端を対側の総腸骨動脈に挿入する。反時計回りに回しながら、対側の内腸骨動脈に挿入し、今度は時計回りに回しながら先端を前方に向けて子宮動脈をねらう。このままで対側の子宮動脈には届かない場合はガイドワイヤーを挿入する。上、下臀動脈を避けるようにするとガイドワイヤーは直接子宮動脈に入るか閉鎖動脈、膀胱動脈、内陰部動脈に入る。とにかく、ガイドワイヤーにかぶせていき、造影してみる。子宮動脈だったらOK。.他の動脈だったら、ゆっくりカテーテルを引いてくれば、コツンといった感触とともに子宮動脈に挿入される。あとは押して、きちんと挿入するか、再びガイドワイヤー先行でカテーテルをかぶせていく。一度子宮動脈に挿入されたカテーテルを塞栓が終わるまで抜いてはならない。なぜならば、子宮動脈はスパスムを起こしやすく、スパスムが起きたら再挿入は困難だからである。術後の安静を考慮した場合、上腕動脈穿刺がよいという考えもある。私は7症例を左上腕動脈穿刺で行った。透視時間は平均で14分かかった。子宮動脈の挿入には問題なかったが、造影手技自体の合併症を考えるとストレスが多く、また、カテーテルが長くなるため、塞栓物質がカテーテル内で詰まることがしばしばで、いやになったのが本音である。術後患者さんは楽かと思いきや、腹痛が起き、結局ベッド上安静にせざるを得なくあまり意味がなかった。利点としては術者の被曝軽減と肺塞栓症の心配がないこと。術後、局所の安静ですむことであろう。塞栓物質:個人的見解を申し上げるとゼラチンスポンジがよい。まず、入手しやすく、使いやすく、安価である。初期のUAEの論文を見ると皆PVAであったので、例に漏れず、60例目までをPVAで行った(うち25例はゼラチンスポンジ併用)。そのうち、ゼラチンスポンジでもPVA同様の臨床効果を期待できるという論文が出始めたのでゼラチンスポンジのみに移行した。最近の論文をみるとゼラチンスポンジの方がPVAより優る。現在ではPVAは使用していない。理由は感染して子宮全摘となった症例はすべてPVAが使用されているという事、PVAは国際がん研究所より発がん性があるかもしれない物質に指定されているという事などからである。妊娠能を考慮してもゼラチンスポンジの方がよいと思われる。私は将来、UAEは世界的にもゼラチンスポンジが優勢になるであろうと予測している。ただ、これには説得力に欠ける。なぜならば報告は圧倒的にPVA,エンボスフェアが多く、ゼラチンスポンジのNが相対的に少ない。また、UAE後の病理組織も得られにくいからである。手術して病理組織がこれこれで、そのためゼラチンスポンジのほうがよいというのであれば説得力がある。塞栓の程度:UAEの術者が最も知りたいと思うことだろう。詰め過ぎは怖く、控えめすぎると効果が少ないと考えるのが普通である。PVAとゼラチンスポンジとでは?大きさは?筋腫の場所によって違うか?などいろいろあると思う。PVAについての個人的見解を申し上げる。筋腫の濃染像が消失するかもしくは弓状動脈がほぼ消失する程度で充分である(筋腫の濃染像が同定できない場合があるので)。ゼラチンスポンジを使用した場合はもう少し強くていいうようである。すなわち子宮動脈上行枝〜水平枝が停滞するまでとしている。ただし多発性筋腫の場合は筋腫核が完全梗塞を免れる場合があるのでやや強めにすることもある。卵巣動脈の関与は常に頭に入れておかねばならない。子宮動脈の近位塞栓が起きた場合、容易に卵巣動脈から血流がくるので、塞栓中の塞栓物質の流れをよく観察し、判断することも肝要である。また、筋腫の血管網を介して内腸骨動脈系の分枝(経験的には閉鎖動脈、膀胱動脈、下臀動脈が多いようである。)が描出されたら直ちに塞栓を中止する。また血流のfree flow下で塞栓することが基本である。しかし、理論的にfree flowは得られない。なぜなら子宮動脈という血管の中にカテーテルという異物が挿入されているからである。カテーテルが充分に挿入されればされるぼど生理的血流からは程遠くなる。分割塞栓:特に大きな筋腫がある場合、一度に塞栓すると急激に壊死となって合併症がおきやすいのではないかと考える人も多いと思う。当初、私もそう考えた(しかし現実的にそうなったケースは1例もなかった)。だから大きな筋腫の場合は一度、軽めに塞栓し、様子を見て、しばらくしてからまた塞栓するのが安全だと考える向きもあるかと思う。しかし、「待機的に複数回に分けてUAEを行うということは結局は効果がない、もしくは再発する可能性が大きい。」と現在のところ考えている。つまりできるかぎり一発で勝負するということ。これはtransient uterine ischemiaが起きることにより、筋腫は顕微鏡レベルにても壊死にいたるという事実に基ずいている。いずれにしろこの点については今後論議されるだろう。transient uterine ischemiaは結局塞栓の程度と関係があるから、塞栓の程度についても議論されるだろう。術後疼痛は必発でかなり強い。顔から脂汗を流しており、お産の時のようである。初期はモルヒネでコントロールしたが、かなり苦戦した。筋注しても2時間程度しか効かない。結局夜中まで、何度も注射をして、かなり痛がらせてしまった。これは、モルヒネの投与方法が適当でなかったと後になってわかった。術前に血中濃度を高めておき、持続皮下注をすることによって充分な疼痛除去ができる。これがわかるまでは、持続硬膜外麻酔にしていたが、硬膜外麻酔では疼痛は充分コントロールできるものの、嘔気、血圧低下があり、下肢もしびれたりして、意外とすっきりいかない。UAE翌日はモルヒネのほうが患者さんはすっきりしているし、より早期離床、早期退院が可能である。ただモルヒネの最適量には個人差があり、事前にそれを確かめる方法がないのでさじ加減、経験がものをいう。ちょうど、お酒を飲んだことがない人が初めてお酒を口にして酔っ払う量のようなものである。いずれにしろUAE後の疼痛は翌日には急速に減少し、座薬で充分な程度にコントロールできる。尚、モルヒネによる疼痛管理には元埼玉県立ガンセンター総長の武田文和先生に御助言いただいた。現在私はスタドールの持続皮下注にて疼痛コントロールをおこなってる。おわりに:1998年よりUAEを開始した。本邦でUAEを実践する一人として、このホームページに自分なりの見解を紹介した。不充分な解説はもちろんのこと、私流の解釈もあり、将来訂正されるかもしれないし、現実に誤った見解があるかもしれない。 また、ここまでこぎつけられたのも決して一人の力ではなく、多くの協力者がいたからこそである。この場を借りて私を支えてくださった方々に深謝する次第である。      

 

 


 


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